Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(二)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(二) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 215.865 Zeichen · 432 Bildschirme
四谷の大通りを行き尽すと、どうしても暗い寂しい御堀端を通らなければならない。文字春は云い知れない不安に襲われながら、明るい両側の灯をうしろに見て、御堀端を右に切れると、娘はやはり俯向いて彼女について来た。松平佐渡守の屋敷前をゆき過ぎて、間の馬場まで来かかった時に、娘のすがたは暗い中にふっと消えてしまった。おどろいて左右を見まわしたが、どこにも見えない。呼んでみたが返事もない。文字春はぞっとして惣身が鳥肌になった。彼女はもう前へ進む勇気はないので、転げるように元来た方面へ引っ返して、大通りの明るいところへ逃げて来た。
「おい、師匠。どうした」
声をかけられてよく視ると、それは同町内に住んでいる大工の兼吉であった。
「あ、棟梁」
「どうした。ひどく息を切って、何かいたずら者にでも出っ食わしたのかえ」
「え。そうじゃないけれど……」と、文字春は息をはずませながら云った。「おまえさん、町内へ帰るんでしょう」
「そうさ。友達のところへ行って、将棋をさしていて遅くなっちまったのさ。師匠は一体どっちの方角へ行くんだ。」
「あたしも家へ帰るの。後生だから一緒に行ってくださいな」