Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(五)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(五) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 215.744 Zeichen · 434 Bildschirme
「あら、それじゃあ鮎川さんも……。まあ」
お房も髪切りの噂を知っているらしく、ひどく驚いたように半七の顔を見あげた。
三
その当時の半七は神田三河町に住んでいたのであるから、小川町から遠くない。お房に別れてひと先ず自分の家へ帰ると、亀吉と弥助が待っていた。
「屯所へ呼ばれたそうですね。髪切りの一件ですかえ」と、亀吉はすぐに訊いた。
「そうだ、猿や狐じゃあ無さそうだと云うのだ」
半七からひと通りの話を聞かされて、二人はかんがえていた。
「しかし、その築山というのがおかしい。そこに何か巣食っているのじゃあありませんかね」と、弥助は云い出した。「去年の長州屋敷の一件もありますからね」
蛤御門の事変から江戸にある長州藩邸はみな取り壊しになったが、去年の八月、麻布竜土町の中屋敷を取り壊した時には、俄かに大風が吹き出したとか、奥殿から大きい蝙蝠が飛び出して諸人をおどろかしたとか、種々の雑説が世間に伝えられた。古い大名屋敷には往々そんな怪談が付きまとうので、屋敷跡の屯所の築山にも古狐か古猫のたぐいが棲んでいないとは限らない。蠣殻町の有馬の屋敷の火の見櫓には、一種の怪物が棲んでいたのを火の番の者に生け捕られ、それが瓦版の読売の材料となって、結局は有馬の猫騒動などという飛んでもない怪談を作りあげてしまった。