Japanische Klassiker mit Furigana
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つきとてぶくろ
月と手袋
江戸川 乱歩
Lesen Sie 月と手袋 (つきとてぶくろ) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.541 Zeichen · 80 Bildschirme
だから人工呼吸で生き返らそうなどとは、毛頭考えなかった。
十分ほど、彼はアームチェアにもたれこんで、じっとしていた。絞首台の幻影が、遠くからバーッと近づいて、眼界一ぱいにひろがり、また遠くから近づいて来た。あらゆる想念が、目まぐるしく彼の脳中をひらめき過ぎた。その中で、どうしたらこの難局を逃れることができるかという、自己防衛の線がだんだん太く鮮明になり、ほかの一切の想念を駆逐して行った。
(ここで、おれは電気計算機のように、冷静に、緻密にならなければいけない。股野が死んだことは、もっけの幸いではないか。あけみは牢獄からのがれて自由の身となるのだ。おれは彼女を独占できる。その上、股野の莫大な財産があけみのものになる。だが、おれは殺人者だ。このまま手を拱いていれば、牢屋にぶちこまれる。激情の結果の殺人だから、まさか死刑になることはあるまいが、しかし一生が台なしだ。自首するのと逃れるのと、その差いくばくであろう。しかも、逃がれる道がないではない。おれはそれを日頃から考えぬいておいたではないか)
克彦はあけみを愛し股野を憎み出してから、空想の中では、千度も股野を殺していた。