Japanische Klassiker mit Furigana
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つきとてぶくろ
月と手袋
江戸川 乱歩
Lesen Sie 月と手袋 (つきとてぶくろ) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.541 Zeichen · 80 Bildschirme
三
そして、洋服ダンスの鍵をポケットに入れると、
「じゃすぐに用意をはじめるんだよ。ぬかりなくね」
云いのこして、入口を出ようとすると、あけみが息をはずませて追いすがって来た。
「うまく行けばいいけれど、そうでなかったら、これきりね」
両手が肩にかかり、涙でふくれた目が、近づいて来た。可愛らしい唇が、いじらしくすすり泣いていた。ふたりは唇を合わせて、長いあいだ、しっかりと抱きあっていた。情死の直前の接吻という観念が、チラと克彦の頭をかすめた。
あけみが中からドアにカチッと鍵をかける音を聞いて、階段へ急いだ。もう手袋をはめているから、何にさわっても構わない。玄関のドアに中から鍵をかけた。それから台所でコップをさがしてつづけざまに水を飲んだ。そして、玄関の鍵はそこの戸棚の中へ入れておいた。
台所のそとの地面は、天気つづきでよく乾いていた。その上、敷石があるのだから、足跡は大丈夫だ。コンクリート塀についている勝手口の戸を、二センチほどひらいたままにして、狭い裏通りに出た。そとの石ころ道もよく乾いていた。
三
真昼のような月の光だ。人に見られてはいけない。あたりに気をくばりながら、グルッと廻って表通りに出た。