Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ますおとし

枡落し

山本 周五郎

Lesen Sie 枡落し (ますおとし) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.765 Zeichen · 67 Bildschirme

Aozora Bunko

幸助は眼を細め、唇を舐めた、「とにかく金を見せてもらおう」

「辰っていう人に会うのが先だ」

「どうしても信用できねえっていうんだな」

「それはおまえさんしだいだ」

なめるなと云うなり、幸助はふところへ手を入れ、匕首を抜いて左へ廻った。芳造は蒼くなった。匕首のぎらっとした光が、彼を恐怖心でちぢみあがらせたのである。しかし同時に、弱い人間ほど人を威しにかける、ということが頭のどこかにひらめいた。すぐ刃物をひけらかすようなやつに強い人間はいない。

「そんなおもちゃはしまっとけよ」と芳造は云った、「なにもむずかしい話じゃあねえ、考えてもわかるだろう、たいまい三両という金を、その人にも会わずに渡せると思うか、なめるんじゃねえとはこっちの云うせりふだぜ」

「おれにゃあおれの流儀があるんだ」と幸助はやり返した、「その金を出すか、それともこいつをずぶっとくらいてえか」

「おれは鼈甲屋の職人だが、刃物はまいにち使いつけてるんだ」芳造は片方の裾を捲って帯にはさんだ、「やる気なら用心してやんな、おめえ足がふるえてるぜ」

野郎と云いざま、幸助は匕首をまっすぐに持って突っかけて来、芳造は躯を右にひらいてそれを躱すと、のめってゆく幸助の背中をうしろからすばやく、力いっぱい突きのめした。