Japanische Klassiker mit Furigana
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ますおとし
枡落し
山本 周五郎
Lesen Sie 枡落し (ますおとし) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.765 Zeichen · 67 Bildschirme
「そうね」おうめは肩をすくめて、くすっと笑った、「そうだわ、あたしこんな小さなじぶんからそう呼び続けてきたわ、もうそろそろ変えてもいいころだわね」
「舌ったらずな口で、芳っさんと呼ばれたことはいまでも覚えてるぜ」
「こんどはなんて呼ぶの」と云ってから、おうめは赤くなった顔を片袖で隠した、「――あらいやだ、恥ずかしい」
「よせやい」芳造もちょっと赤くなり、うしろ首を掻いた、「へんなことを云うなよ」
「ごめんなさい、でも、――」
「いいよ、いいよ、いまっからそんなことを考えることはねえさ」芳造はてれたようにいそいで云った、「めしでも食おうか」
「向島までゆくにはおそいかしら」
「そんなことはねえさ、けれども花はもうおしめえだぜ」
「牛の御前へゆきたいの」とおうめがそっと云った、「亡くなったお祖父さんはあそこが好きで、暇さえあれば牛の御前へあるきにいったんですって」
「そうだ、あそこには腰掛け茶屋があって、酒も飲ませるそうだからな」
「お祖父さんはそんなにお酒飲みじゃなかったわ」
「そうは云やあしねえ、そういうわけじゃあなく、そういう掛け茶屋で一本の酒をちびちびやる、っていうこともたのしみの一つだということさ」