Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme

Aozora Bunko

「もう戻って来たのか?」

「うん。途中まで行ったんだが――」

五郎は片足飛びで、耳の内の水を出した。

「戻って来たよ」

「福は?」

「見うしなった。先に行ったんだろう」

やはり体が冷え、酔いも醒めていた。五郎は衣服をつけ、掌をこすり合わせた後、食器のアルコールを飲んだ。三十分経っても、福は戻って来なかった。

「もう帰ろうや」

興梠が言った。おそらく福は双剣石に泳ぎ着き、ここに戻らずに近くの岸へ上り、陸路を歩いて宿舎に戻ったんじゃないか。そんな想像を興梠は立てたが、五郎は黙っていた。へんな予感があった。

缶詰類を水に放り、二人は宿舎に戻ったが、福の姿は見えなかった。海水のため体がべたべたするので、五郎はまた外に出て、真水で全身を拭う。海を眺めながら、さっきの危懼感を思い出していた。

翌朝、福の死体が波打際で発見され、早速医務室に運ばれた。水を飲んでいる様子がないところから、心臓麻痺と診断された。福の戦病死は、暗号『仁』によって、本隊に報告された。暗号文は五郎がつくった。

『仁にみなぎれるその戦死――』

福がつくった替歌の文句は、福にとって真実となった。

「溺れたんじゃなく、心臓麻痺だった」