Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
私は息が苦しくなった。新兵の時、私も何度も之をやらされた。常人よりも膂力の弱い私は、常に人一倍の苦痛を忍ばねばならなかった。その記憶が眼前の光景につながり、呼吸がつまるような気がした。私は、吉良兵曹長の顔をぬすみ見た。
乏しい光線の中で、吉良兵曹長の顔は、思わずぎょっとする位、青ざめて見えた。非常な苦痛を押しこらえているような不思議な表情が、彼の顔を歪めているようであった。眼だけが、偏執的に光りながら、伏せている兵隊の背にあちこち動いた。燃えるような瞳のいろであった。不意に振り返り、私の方を見た。
「村上兵曹。皆を立たせろ」
そう言いすてると、棒を崖の下になげすてた。棍棒は岩角に二三度にぶい音を立てて、熊笹の谷間に落ちて行った。彼は立ち止り、一寸何か言いたそうにしたが、何も言わず、私に背を向け、大股に居住区に入って行った。幅の広い、やせた肩のあたりが、何となく淋しそうに見えた。
「立て」
兵達は、皆のろのろと大儀そうに立ち上った。疲労がそうさせるのか、皆一様な単純な表情であった。考える力を喪失した、言わば動物園の檻のけもののようであった。妙に不気味な圧迫を私は感じながら、私は低い声で言った。