Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme

Aozora Bunko

夜光虫の誤りだと判ったとき、整備兵たちはどんな思いでまた寝に就くのであろう。にがい笑いは、何か生理的な発作のように、止め度無く湧き上って止まなかった。私は立ち上り、訳文を当直士官に差し出した。指揮官卓にいた準士官等の視線が、それに集った。読んでも、誰も笑わなかった。

「夜光虫、か」

変に感動のうすれた声で誰かが言った。

私は席に戻り、当直士官が幕僚室に電話をかける声を聞いていた。電話機の具合が悪く、夜光虫、というのが仲々通じないらしかった。その声に混って、外の準士官等の、疲れたような口調の会話を耳にとめていた。

「近頃、いらいらしているらしいのだね」

「ひがんでるのさ。奴さん」

会話は、それだけで止んだ。もはや起きている必要はないというので、それぞれの寝室へ、壕を出て行くらしかった。

三時になった。交替の当直員が来た。私達は申継ぎをし、並んで暗号室を出て行った。通路を出ると、真闇であった。私は目を慣らすために、出口の崖によりかかり、暫く待っていた。対岸の鹿児島市は、相変らず一二箇所、静かに焔を上げていた。もはや消す気もないようであった。昨夜と同じ個所が、同じ量の焔をあげて、とろとろと燃えている。