Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme

Aozora Bunko

――

歩き出した。片手を崖に沿わせ、歩き悩みながら、私は、大船団に見まがう夜光虫の大群の光景を想像していた。暗い海の、果てから果てまでキラキラと光りながら、帯のようにくねり、そしてゆるやかに移動して行く紫色の微光を思い浮べたとき、私は心がすがすがしく洗われるのを感じた。先刻の気持の反動と判っていながらも、私は此の感傷に甘く身をひたしていた。ひそやかな孤独の感じが、快よく身体を領していた。夜風が、顔の皮にあたって吹いた。

山道を長いことかかって登り、居住区に着いた。入口を入ると、奥の卓によりかかり、誰かが腰をおろしていた。私の方を見た。吉良兵曹長であった。今までそのままの姿勢で、じっとしていたらしかった。

「上陸地点に近づいたか」

「あれは、夜光虫だそうです」

私は事業服の襟の紐を解きながら、そう答えた。安堵とも疑惑ともつかぬ妙な表情が、彼の顔にちょっと現われて消えた。いじめられた子供のように切ない表情にも見えた。光を背にしているので、それも定かでなかった。そして眼を閉じた。

私は、寝台に行き、音のしないように横になった。両掌をそろえて、顔をおおった。