Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.078 Zeichen · 285 Bildschirme
上背のある、筋肉質の逞しい躯。肩から背へかけての、かっちりとひき緊った線。それらは殆んど魅惑的なほど精悍さに溢れ、しかも、たとえようのないほど温かく、ゆったりと静かにみえた。
「父の遺書はどういう意味なのでしょうか」と主水が訊いた、「父が云っていることの意味を教えていただけませんか」
「話しましょう」と甲斐は頷いた、「そのつもりで千本杉へ案内を頼んだのです、まだよほどありますか」
「小道で二里たらずです」
仙台では六町一里を小道といった。二人は虚空蔵の脇をまっすぐにゆき、愛宕社の山つきをまわって、丘ひとつ越した向うへおりていった。小高い丘と丘にはさまれて、かなり広い草原がひらけ、北側に深い杉の林がある。草原の中を一と筋の細い小川が流れてい、そのあたりで蛙の声が聞えた。――黄ばんだ葉の見える雑草は、腰を没するほど伸びて、薄い夕霧の立ちはじめたなかに、昼顔の花が白く、点々と、にじんだように白く点々と浮いてみえた。
「誰かおります」
主水がそう云って、片方を指さした。すると、それを待っていたかのように、三十歩ばかり向うの草むらの中から、一人の老人がすっと立ちあがった。