Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme

Aozora Bunko

甲斐はその手を握ったが、「寒いよ」と云って、すぐに夜具の中へ押し戻した。おくみは指を絡んで放さず、夜具の中で、甲斐の手を握っていた。

「いったいどこが悪いんだ」と甲斐が訊いた。おくみは病気じゃないんです、と云いさして、夜具の中へ顔を隠し、甲斐の手をぎゅっと握り緊めた。甲斐は訝しそうに、そのようすを見ていたが、とつぜん、その顔を歪めた。まるで、急に歯でも痛みだしたかのように、するどく顔を歪め、それから低い声で、そうか、と呟いた。悔恨と自責の色が、甲斐の表情に、いたましいほどはっきりと、あらわれた。

「十日ばかりまえに、診てもらって、わかったんです」と夜具の中からおくみが云った、「ちっとも食がすすまないし、喰べると吐いてしまうし、いつまでもそんなことが続くでしょ、きっとなにかの病気なんだと思って、医者に来てもらったんです、恥ずかしかったわ」

「そうだと云われたときは恥ずかしくって」とおくみは続けた、「本当に恥ずかしくって、足の裏まで赤くなるような気がしましたわ」

甲斐は眼をつむった。

「あたし、赤ちゃんができるなんて、考えたこともなかったんです、年も三十一になっているし、初めからそんなこと頭になかったでしょ、ですから医者にそうだと云われたときは、消えてしまいたいほど恥ずかしかったんですよ」