Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme
と甲斐は思った。「置毒」が現実に行われるという、証拠はなにもないが、ふしぎにこんどは危ないということが感じられた。丹三郎はまだ十八だ。彼を死なしたくはない、と甲斐は思った。
だが彼はいちずな性格である。鬼役にあがるときの、思い詰めた気持は、いまでも変ってはいないであろう。危険を避けろなどと云っても、承知する人間ではない。危ないと云われれば、むしろすすんでやるほうの人間だ。やむを得まい、彼にはそうさせるよりしかたがないだろう、と甲斐は思った。いちど思いきめて、少しも迷わずに、それをやりとげることのできる人間は、仕合せだ。
甲斐は眼をつむって、おくみが懐妊したということを考えた。おくみ自身「思いもよらなかった」と云ったが、甲斐もそんなことがあろうとは、まったく考えなかった。そうなることは、いわば当然であるのに、ながいあいだ子を持たなかったためか、もう子は欲しくないと思っていたためか、そんな懸念はまったくなかったし、そうと聞かされたときは、突然おとし穴へでも落ちたような気持になった。自分には子は不要だ。いまいる帯刀でさえ、できるなら縁を切ってしまいたい。