Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme
「わたくしうかがいますわ」
「それが話せなくなった」
「どうしてですの」
「話してもむだだということがわかった、原田家のことを話しているうちに、もう一つのことは話さないほうがいい、ということがわかったのだ」
宇乃は眼を伏せた。同じようなことがあった、と宇乃は思った。たしかに、いつかどこかで、これと似たようなことがあった。そう思いながら、ふと眼をあげると、坂道の左に、熟れた実をびっしり付けた、茱萸の木があるのをみつけた。宇乃は足を停めて、まあきれいな、と眼をみはった。
「欲しければ折って来ようか」
「ええどうぞ」と宇乃が云った、「おばさまへ、お土産に致しますわ」
帯刀は宇乃の顔を見、すぐにその眼をそらしながら、いやと、首を振った。
「お祖母さまにだ、あの人にではない、土産にするならお祖母さまにだ」
宇乃は「はい」といった。
帯刀の眼はきつく、その声は激しかった。彼が新らしい母になじまないことは、宇乃もよく知っていた。甲斐の二度めの妻は、津田玄蕃の妹で、名を伊久といい、今年二十九歳になる。結婚するとすぐに、甲斐は江戸へ去り、伊久はあとに残った。まだ夫婦とは名ばかりであるし、原田家の主婦としても、その位置は安定していなかった。