Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme

Aozora Bunko

と改めてくれた。万治の騒ぎ、殊に暗殺事件については、その後いろいろと批判が出ていたので、脱走の件も咎めなしということで片がついた。

「もう逃げ隠れする必要はなくなった」と新八は云った、「誰に憚ることもなく、なにを恐れることもなく江戸の町を歩ける、おれもようやく、人間らしい気持になることができたんだ」

「よかったわね、ほんとによかったわ」

「おまえならわかってくれるだろう」と新八は云った、「世間の眼から隠れて生きるというくらい、みじめな、辛いことはないからな」

「わかるわ、よくわかってよ新さん」おみやはまた眼を拭いた。

新八の言葉が、おみやには深くするどくひびいたようだ。おみや自身が、世間の眼を憚りながら、生きて来たのである。新八が脱走者として、生活する力もなく、伊達家の人たちの眼を恐れ、捉まりはしないか、という不安に絶えず怯えていたように、自分もまた世間の眼から隠れ、人にみつかるのを恐れながら暮して来た。新八はその恐怖から解放され、大手を振って町を歩くことができる。だが自分は――おみやもいちど、自分で自分を解放し、人間らしく生き直そうとした。だがそれはできなかった。