Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme
おみやは、そうよ、と云った。そのとおり、あたしはその話しはしなかった、話すつもりでいたが、あなたは証書のことが出るとそれで夢中になって、あたしのことなどは考えてみようともしなかった、そうでしょ、とおみやが云った。
「でも、あのとき、あなたはそれを訊いて下さらなければいけなかったのよ、一と言でも、たった一と言でも訊いて下さらなければね」
おみやの口ぶりには、ますます酔いがあらわれ、言葉もつけつけと無遠慮になった。
「黒田さん、あたし、あのとき云わなかったことを、いまここで云います」
男が、いや、と遮った、「その必要はない、聞かなくともわかっているし、私は責任をはたすつもりだ」
「責任をはたす、ですって、――へえ、どういうふうに責任をはたして下さるの」
「もし貴女が望むなら、私は貴女を妻にするつもりです」と男が云った。
おみやは喉で笑いだした、くくと喉で笑いだし、それから、かなり高く、声に出して笑って、ごめんなさい、と云った。男は沈黙した。
「笑ったりしてごめんなさい、どうして笑ったりしたのかしら、笑うような気持はこれぱかりもなかったのに、そうよ、もちろんあなたを笑ったんじゃありません、自分を笑ったのよ、黒田さん」