Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme
茶は不出来だった。おくみはまだ気持がおちつかないのだろう。湯がこなれていず、おまけにまだ熱かった。甲斐は黙って喫し、茶碗を置いておくみを見た。
「今年はまだ芙蓉が咲かないようだな」
おくみは訝しそうに見かえり、それから、ああと頷いて、虫が付いたので、ついこのあいだ切ってしまった、と云った。神経が尖っているためだろう、切ってしまったと云ってから、それがなにか不吉な前兆ででもあるかのように、怯えたような顔つきをし、眼をそらした。
久馬が知らせに来るまで、二人は黙って坐っていた。
「こんどはいつ来て頂けましょうか」
おくみは甲斐が立ちあがったとき、こらえきれないような口ぶりで訊き、じっと、甲斐の眼を見あげた。甲斐は微笑を湛えた眼で、なだめるようにおくみを見、脇差を差しながら答えた。
「月が替ったら来る」
「きっとでございますね」とおくみが云った。
それは来ることを慥かめるというより、それまで無事でいてくれるか、という意味のようであった。甲斐は頷いて、きっと来ると答え、おちついた足どりで居間を出た。
馬は三頭、伊達家の紋を印した提灯をつけて、久馬が先、村山喜兵衛がしんがりで、夜の街を芝へいそいだ。