Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme
「二心はない、と仰しゃるのですね」
「いいえ、わたくしはあれが、原田甲斐宗輔であることを信じているばかりです」
慶月院はそこで新左衛門を見、穏やかな口ぶりで云った。
「ただ一つだけ申しましょう。こんど孫の帯刀に縁談が起こりました、相手は松山の娘です」
「――松山どのの……」
新左衛門は訝しそうな眼をした。慶月院は頷いて云った、「わたくしはこの縁談をまとめるつもりでおります、宗輔にもさして異存はないでしょう、しぜん、あれが松山と絶縁するつもりだという評は、誤っていることになります」
「それは、まことでございますか」
「茶が冷えたようですね」
こう云って、慶月院は、宇乃さん、と呼んだ。静かであるがよく徹る声で、返辞が聞え、まもなく、茶の間に通ずる襖をあけて、宇乃が顔をみせた。宇乃は実の生っている茱萸の枝を持っており、慶月院はそれを眼にとめた。
「山で採ってまいりました」と宇乃がその枝を見せながら云った、「帯刀さまに砦山へ伴れていって頂きましたの、その帰りにみつけたものですから、お慰みにと存じまして、採ってまいりました」
「そう、みごとだこと」と慶月院は云った、「茱萸の実は赤くなれば、喰べてみなくとも熟れたことがわかる、――人の心の奥というものは、……」