Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme

Aozora Bunko

それまで読書でもしていたものか、傍の小机の上に、一冊の本がひらいたまま置いてある。それでも勉強するような気持になったのね、おみやはこう思って、そっと覗いてみると、それはなにかの浄瑠璃本であった。

「新さん」おみやは彼をゆり起こした、「起きてちょうだい、新さん、あたしよ」

新八は眼をさました。ぼんやりと眼をさまし、そこにいるのがおみやだとわかると、寝たまま手を伸ばして、おみやを抱こうとした。

「だめよ、起きてちょうだい」おみやは彼の手を押し返した。

新八は訝しそうに女を見、足をぼりぼり掻きながら、大きな欠伸をした。それから、もの憂げに起きあがったが、ふいにとびかかっておみやをとらえ、暴あらしく抱いて、そこへ押し倒そうとした。

「よして」とおみやは激しく拒んだ、「人を呼ぶわよ」

「どうしたんだ」

「放してちょうだい」

「どうしたんだ」

「痛いから放してよ」

冷たく固い声であった。新八は手を放し、さらに訝しそうな眼つきで、おみやを眺めやった。どうしたのだ、おみやが拒む筈はない。いつもおみやのほうから求めるし、どんなに求めても飽きるということがなかった。

「兄のところへ来たの」