Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme
――堀内惣左衛門がすすみ寄って来て、七十郎が出てまいったそうです、と云った。甲斐はけげんそうに惣左衛門を見た。
「――七十郎」
「伊東七十郎でございます」と惣左衛門は云った、「小野(伊東新左衛門)どのの病状が悪いという知らせがいったのでしょう、今朝早く、御門のあくと同時に、伊東家へ到着したということです」
甲斐は頷いて、今日は継ぎ裃でゆこう、と云った。御書状はこのまま使者に持たせていいか、と惣左衛門が訊き、甲斐は「よし」といった。
甲斐は駕籠で品川へ向かった。供は村山喜兵衛、矢崎舎人、辻村平六、そして成瀬久馬の四人、べつに挾箱と献上品を運ぶために、小者が三人ついた。品川の下屋敷に着いたのは黄昏で、下屋敷家老の大町備前(定頼)が出迎えた。甲斐は支度を直してから、接待ノ間で再び大町備前と会い、献上品をさしだして、やや暫く対談した。
備前の態度は、三年まえとは違って、極めで慇懃であり、親しげであった。それは、甲斐が国老になったからではなく、どうやら自分と同じく、甲斐も一ノ関の与党である、と信じているためのようで、話のなかでもしきりに、そのことを匂わせるような口ぶりをみせた。