Japanische Klassiker mit Furigana
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はるはばしゃにのって
機械・春は馬車に乗って
横光 利一
Lesen Sie 機械・春は馬車に乗って (はるはばしゃにのって) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 77.492 Zeichen · 156 Bildschirme
このような喧騒(けんそう)を極(きわ)めた中でも、彼の箱の一隅で、喇叭はイレーネの肩に手をかけ、何事か一心不乱のさまで彼女の耳にかき口説(くど)いてやまなかった。喇叭の腕に巻きつかれた中で、じっと竦んだまま首垂(うなだ)れてゆくイレーネの首の白さを眼にしながら、彼は寂しさを感じた。そして今度は眼の大きな踊子に狙(ねら)いをつけ餅殻を投げてみるのだった。その子の体は、周囲から飛び来る弾の集中射撃を浴びていて、身を飜す暇もなく、絶えず肩に胴に餅殻は爆けつづけていた。ぴしゃっと頬にあたったときは悲鳴をあげたが、すぐまた反対の側から同様のを続けて喰(くら)うと出かかった悲鳴も声にはならず、もう不貞不貞(ふてぶて)しい覚悟でさらに飛び散る弾の中を踊り潜(くぐ)ってゆくのだった。
「あの子可哀想(かわいそう)に、やられてばかりだなア」
梶は投げつけようとしていた餅もやめにして云った。
「どの子です」
「あの子」
おいおい、と云う風にすぐまたヨハンは、眼の大きなその踊子を手招きした。この踊子も小趨(こばし)りに彼らの箱へ来ると、これはイレーネとは違い、いきなり真近く梶の傍へぴたりと擦(す)りよって来て、じっと彼の顔を正面から瞶(みつ)めた。