Japanische Klassiker mit Furigana
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はるはばしゃにのって
機械・春は馬車に乗って
横光 利一
Lesen Sie 機械・春は馬車に乗って (はるはばしゃにのって) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 77.492 Zeichen · 156 Bildschirme
羞しいの」
芳江に云われても子供は顔を隠しつづけている帽子の縁を噛(か)みながら、矢張り立ちはだかったまま黙っていた。
梶は水を飲みつつ再びこれから前の定着した日常生活が始ろうとしているのだと思った。しかし、しばらく日本の時間を脱していた梶の感覚は自分の家族の生活がこの東洋の一角にあったのだと知って、不思議な物を見るように妻や子供を手探り戻そうとし始めた。それにしても、何と自分は大きな物を見て来たものだろう。あれが世界というものかと、梶は自分の子供の顔を眺めて初めて世界の実物の大きさにつくづく驚きを感じるのであった。虚無といい、思想というも、みな見て来たあの世界より他にはないのだと思うと、夢うつつのごとくあれこれと思い描いていた今までの世の中が、一瞬にしてかき消えたように思われた。
「いったい、どこを自分はうろうろしているのだろう。この自分の坐っている所は、これゃ何という所だろう」
梶は浦島太郎のように妻子の前であるにも拘(かかわ)らず、ときどき左右をきょろきょろ見廻した。全く自分の見て来たものも知らずにまだ前と同じ良人(おっと)だと自分を思っている妻の芳江が、このとき何となく梶には憐(あわ)れに見えてならなかった。