Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

ぶしゅうこうひわ

武州公秘話

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 武州公秘話 (ぶしゅうこうひわ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.572 Zeichen · 209 Bildschirme

Aozora Bunko

又曰く、

それより後は絶えて首の御用を被仰出候ことなく、かの床穴をも舊の通りに被レ令二修理一候、程経て御前へ罷出候得者、松雪院様何とやらん面はゆげに愚老が耳の傷痕を見そなはせられ、かの砌は女の身として酒興に乗じ便なきことをし侍りぬ、許せよと被仰候、何共恐入候儀にて唯々難有事に奉レ存候、素より賤しき身にて候得者たとひ御手討に被成候とも何かは苦しかるべきに、一命をお助け被下し上は、かばかりの傷は物の数にても候はず、剰へ御自ら御手を下し給ひしは生々世々の面目とこそ存候へとて、しばし感涙に咽び候。その傷痕今も愚老が右の耳にあり、貴き御方の御慰みに遊ばされ候形見かと思へば、まことに此の耳我が物にして我が物にあらずと覚ゆる也

と。

嗚呼、慈愛深く、淑徳の誉れの高かった松雪院のような夫人でも、時にはこんな過ちを犯すのであろうか。もしそのことが事実とすれば、此の夫人の三十有餘年に亙る純潔無垢な生涯に唯一の汚点を残すもので、我等は容易にそれを信じられないし、又信じたくない。苟くも大名の北の方でありながら、酔餘の戯れに生きた人間の耳へ刀で穴を開けると云うようなことは、不用意に聞くと、全くその人の徳を傷け、美しい性格に暗影を投げる事件である。