Japanische Klassiker mit Furigana
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ぶしゅうこうひわ
武州公秘話
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 武州公秘話 (ぶしゅうこうひわ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.572 Zeichen · 209 Bildschirme
「殿様、さあ、見に入らしって下さいましな」
「札を拵えなけりゃいかんよ。紙と刀を持っておいで」
「えゝ、えゝ、ちゃんと此処にありますの」
もう彼女は蚊帳の外にいて、硯筥や料紙入れから小刀や紙を取り出しながら、始終面白そうに笑いつゞけていた。
以下、道阿弥自ら語るところを紹介すると、次の如くである。
右の耳にいたし候へと被仰候得者、忝くも松雪院様雪の如き御手を以て愚老が右の耳朶をお持ちなされ、暫く首の態をお改め被遊、鼻声にて低くお笑ひ被成候、瑞雲院様傍より御覧なされ、心臆し候哉とお尋ねなされ候ところ、につことゑみを浮べ給ひ、何しに臆し侍らん、されど此の死顔の態を御覧ぜよ、定めし坊主奴は生きたる空もなき心地にて侍らんものを、かく神妙に首の姿を真似候て何事も知らざるやうに見え候ことの可笑しさよとて、右の御手に刀子を持ち直し給ひ、そのまゝづぶとお突き遊ばされ候得者、血少しばかり流れ出で、勿体なくも白妙の御手を汚し候、愚老はかくても聊か動ずる気色もなく死せるが如くにて候ひしかば、さりとては辛抱強き坊主よとてお笑ひなされしかども、さすがに興ざめ給ひしにや、そのゝちは格別のこともなく、々に札をお附け被成、急ぎ御夫婦とも蚊帳の内へ御入被遊候、尤も夜半に及ぶまで睦じき御物語の御様子にて、おん仲至極めでたかりし事共也