Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれえぬひとびと
武蔵野
国木田 独歩
Lesen Sie 武蔵野 (わすれえぬひとびと) von 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 94.018 Zeichen · 192 Bildschirme
青年が落とせし楓の葉、流れて少女の手もと近く漂いゆくを、少女見てしばし流れ去るを打ちまもりしが急に手を伸ばして摘まみ、皿にのせて傍らに置きぬ。葉は水に湿いていよいよ紅に、真白の皿に置かれしさまは画めきて見ゆ。この時青年は少女の横顔の何者にか肖たるように覚えしも思い出ださざりき。ただ耳より腮にかけし肉づきはかれの画心を惹く殊に深かりしのみ。
由なき戯れとは思いつつも、少女がかれに気づかぬを興あることに思いしか、はた真白の皿に紅の木の葉拾いのせしふるまいのみやびて見えつるか、青年はまた楓の葉を一つ摘みて水に投げたり。木の葉は少女の手もとに流れゆきぬ、少女は直ちに摘まみてまたかの大皿にのせたり。しかし今洗うは最後の品なり。
こたびは青年手に持ちし小枝をそっと水に落とせば、小枝は軽く浮かびて回転りつつ、少女の手もと近く漂いぬ。少女は直ちにこれを拾い上げて、紅の葉ごとに水の滴り落つるを見てありしがまたかの大皿にのせ、にわかに気づけるもののごとく振り向きたり。青年の目と少女の目と空に合いし時、少女はさとその面を赤らめ、しばしはためらいしが急に立ちあがりかの大皿のみを左手に持ちて道にのぼり、小走りに駆け入りしは騎馬隊の兵士が常に集まりて酒飲むこの街唯一の旗亭なり。