Japanische Klassiker mit Furigana
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みとばいふ
水戸梅譜
山本 周五郎
Lesen Sie 水戸梅譜 (みとばいふ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.607 Zeichen · 25 Bildschirme
ひきだされたのはいうまでもなく五郎兵衛であったが、繩はつけられていなかった。左右を下役人が戒めて縁下のむしろに坐ったかれは、凛とした眉をあげ、すこしもまぎれのない態度で代官を見あげていた。甚四郎がしらべに当った。
「姓は五百旗、名を五郎兵衛と申します」訊問にしたがってかれは歯切れよく、はっきりと答えた。「生国は奥州でございますが、御当地へは十六年まえにまいり、以来ずっと千波ヶ原にて農作をつかまつっております」「家族はなんにんあるか」「母がございます」「父親はなんとした」五郎兵衛はちょっと答えられなかった。悲しげに眼を伏せ、唇がふるえるようにみえた。しかしすぐに気をとりなおしたようすで、「十六年以前に死去つかまつりました」「寺はいずれか」「…………」「どこへ埋葬したかと申すのだ」
この問いにはついに答えられなかった。甚四郎は押して訊かず、次ぎに移って水戸藩士と称した事実のしらべにかかった。
この審問を屏風のかげで聴いていた光圀は、すこしまえからしきりになにか思案していた、心の奥ふかくに、えたいの知れない一種の感情がうごきだした、それがはっきりと意識にのぼらない、妙に不安な感じなのだ。