Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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すいごういぶん

水郷異聞

田中 貢太郎

Lesen Sie 水郷異聞 (すいごういぶん) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.516 Zeichen · 36 Bildschirme

Aozora Bunko

女はくつろぎのあるな顔をしていた。

(ありがとうございます、……先生にお枕を執りましょうか)

彼は昨夜の女に対した感情を彼女にも感じた。

(そうですね、執って貰おうか、後の壁厨にあるから執ってください)

女は起って往って後の壁厨を開け、白い切れをかけた天鵞絨の枕を持って来て彼の枕頭に蹲んだ。彼はその刹那、焔のように輝いている女の眼を見た。彼はその日の昼比、帰って往く女を坂の下の電車の停留場まで見送って往った。そして、翌々日の午後来ると云った女の詞を信用して、その日は学校に往ったが平常の習慣で学校の食堂で喫うことになっている昼飯をよして急いで帰って来た。

しかし、女は夜になっても来なかった。何か都合があって来られないようになったのなら、手紙でもよこすだろうと思って手紙の来るのを待っていたが、朝の郵便物が来ても手紙は来なかった。彼は手紙の来ないのはすぐ今日にでも来るつもりだから、それでよこさないだろうと思いだして散歩にも出ずに朝から待っていたが、その日もとうとう来もしなければ手紙もよこさなかった。

彼はそれでも手紙の来ないのはすぐ来られる機会が女の前に見えているからであろうと思って、その翌日も待ってみたがその日もとうとう来なければ手紙もよこさなかった。