Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せんこうてい「ハビヒツブルグ」

潜航艇「鷹の城」

小栗 虫太郎

Lesen Sie 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.395 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

でも、勘忍してね。私、もうどんな事があっても、一生離れたくないのよ。よう、どうしたの、そんなに黙っていて……」

左枝は揺すられるままに、しかし、眼を据えてじっと天井の一角を睨んでいた。それは、早苗が気づいたら、うち萎れてしまうような冷やかさだった……。

「だが、それは別として、君に訊きたいんだが、君は昨夜、瓦斯ストーブの栓に躓いたようだったね。それまでに、栓がどうなっていたか、気づかなかったかね」

「開いてましたわ、ごくほんの少しね。だけど……」

左枝はそれを聴くと、早苗の愛撫も忘れて、沈んだように考えはじめた。しかも鼻をひくつかせて、その部屋に漲っている、なにかの香りを嗅ぎ取ろうとした。しかしそれは、早苗にある石竹のような体臭ではなかった。昨夜はあの部屋で、いまここにもある、柔皮花の匂いをいっこうに感じなかった。それだのに、この室では、まるで早苗の情熱から逸散してでも行くかのように、涼しげな、清々しい花粉の香りがする。ああそれが、昨夜はなぜ、薫らなかったのであろうか。

「それから、もう一つ訊きたいんだが、君は一度でも、稲野谷の顔を見たことがあったかね」