Japanische Klassiker mit Furigana
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せんこうてい「ハビヒツブルグ」
潜航艇「鷹の城」
小栗 虫太郎
Lesen Sie 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.395 Zeichen · 263 Bildschirme
しかし、ここで奇異は、南北の四谷怪談であるが、それだけは、かつてこの一座の舞台に上ったためしがなかったのである。
事実作者も、幼少のころおい、この一座の絵看板には数回となく接していて、累や崇禅寺馬場の大石殺し、または、大蛇の毒気でつるつるになった文次郎の顔などが、当時の悪夢さながらに止められているのである。それゆえ、もしその当時に、お岩や伊右衛門はまだしものこと、せめて宅悦の顔にでも接していたならば、作者が童心にうけた傷は、さらにより以上深かったろうと思われる。
ところがついにそれは、小芝居にありきたりの、因果噺ではなかったのである。
寄席の高座で、がんどうの明りに、えごうく浮き出てくる妖怪の顔や、角帯をキュッとしごいて、赤児の泣き声を聴かせるといった躰の――そうしたユーモラスな怖ろしさではなかった。それとは、真実似てもつかぬ、血と人体形成の悲劇だったのである。
狂乱した肉慾が、神の定めも人の掟もあっけなく踏み越えて、ただひたすらに作り上げた傑作がこれであり、里虹一座の人たちは、まったく油地獄のそれのように、うちまく油流れる血、踏みのめらかし踏みすべらかして、とめどない足のぬめりに、底知れず堕ち込んで行くのだった。