Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せんこうてい「ハビヒツブルグ」

潜航艇「鷹の城」

小栗 虫太郎

Lesen Sie 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.395 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

「僕はフロイドじゃないがね。これは一種の、艶夢じゃないかと思うよ」

と検事は莨の煙を吐いて、いつまでも法水の眼を嘲った。

「だって、あの戦女みたいな、てんで意志だけしかないような冷たい女にだって、ときおりは愛使が扉を叩くことがあるだろう。ところが、亭主の八住ときたら、いつも精神的な澄まし汁みたいなもので、その中には肉片もなければ、団子一つ浮いちゃいないんだ」

「なるほど、そうなるかねえ」

と法水は、検事の好諧謔にたまらなく苦笑したが、めずらしく口を噤んでいて、彼はいっこうに知見を主張しようとはしなかった。

そして、「ニーベルンゲン譚詩」を片手に下げたまま、旧の室にぶらりと戻っていった。が、はからずもそこで、この事件の浪漫的な神秘が、いちだんと濃くされた。

彼はそこにいる三人を前にして、妙に底のあるらしい言葉を口にした。

「僕は、だんだんとこの事件が、いわゆる法則でないと呼ぶものに、一致するような世界であることが判ってきました。

それは、純然たる空想の産物で、まったくの狂気が勝を制する世界なのです。その中には、神や精霊が現われてきますが、しかしそれは、その世界でのみあると信じられているもので、少なくとも僕らは、一応それに額縁を嵌めてみる必要があると思うのです。