Japanische Klassiker mit Furigana
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みおつくし
澪標・落日の光景
外村 繁
Lesen Sie 澪標・落日の光景 (みおつくし) von 外村 繁 (とのむらしげる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.889 Zeichen · 268 Bildschirme
しかしいずれもつい先日まで歩いていた道である。感傷とも言い難いのも当然であろう。むしろ小休止の中にある、至って気楽な感情のようでもある。或は若い私は東京の新しい生活に、新しい意欲を燃していたのかも知れない。
遅く「レーヴン」に入る。良子もいる。妙子もいる。玲子もいる。菊枝等もいる。常連客の顔も見える。しかしこうして一人でコップを口に運んでいると、やはり先日からの奇妙な感情が湧いて来る。まるで先日までの私や、梶井や、友人達の姿を見返しているような、傍観者の感情である。つまり舞台は廻ってしまったのである。ひどく懐しいが、最早、私の出るところではない。私は「レーヴン」を出る。
深夜の京の街には、春の細雨が降っている。私は電車の絶えた四条通りを歩いて行く。背後から駆けよってくる下駄の音が聞える。玲子である。
「どうしたんだ」
「マスターと喧嘩して、飛び出して来ちゃったの」
玲子は東京で育ったと言っている。私が歩き出すと、玲子も黙って従いて来る。
「そんなことして、どこか、行くところあるの」
「そんなとこないわ」
十七の娘を細雨の降っている深夜の街に捨て去るわけにはいかない。