Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みおつくし

澪標・落日の光景

外村 繁

Lesen Sie 澪標・落日の光景 (みおつくし) von 外村 繁 (とのむらしげる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.889 Zeichen · 268 Bildschirme

Aozora Bunko

私は玲子を私の下宿に伴うより他はなかった。

床を二つ並べて敷き、私はその一つに寝る。やがて床の中から玲子が言う。

「新村さん、私、処女よ」

「それは偉い。大切にするんだよ」

暫くして、また玲子が言う。

「ね、ここへ手あててみてよ。ほら、こんなに動悸がしてるのよ」

少し好奇心は動く。中学生の時の友人の話を思い出す。滝湯の娘達の乳房の形も目に浮かぶ。しかしそれだけのことも私にはできない。まして十七の娘の据膳を喰らうような欲望は、私には全くない。男の恥かも知れないが、そんな性の機微には、私は無知に等しい。が、その時、私に一番強く作用したのは、京都の生活はもう終ったのだ、という、先刻からの奇妙な感情のようである。

私は黙っている。また、玲子が言う。

「新村さん、もう眠ったの。私、なんだか、頼りないわ」

「じゃ、こうして眠ろう」

私は手を伸ばし、玲子の手を取って、目を閉じる。さすがになかなか眠れるものではない。しかし私は性欲的刺戟は少しも感じることはなかった。

翌朝、玲子に見送られて、私は東京へ発った。

その五月、六本木のカッフエで、先妻、とく子に出会う。一見して、ここに私の妻がいる、と直感する。