Japanische Klassiker mit Furigana
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みおつくし
澪標・落日の光景
外村 繁
Lesen Sie 澪標・落日の光景 (みおつくし) von 外村 繁 (とのむらしげる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.889 Zeichen · 268 Bildschirme
そうして私はあの夜の、あの一瞬の不思議な感情を思い出した。
あの時、私は自分の醜行に呆れはてた。私はそんな自分の正体を自分の手であばこうと、自分の着物を脱ぎ捨てたのではないか。そうして人間の愛の愚かさを直視し、更にそれに徹することによって、あの不思議な幸福感が湧いたのではなかったか。勿論、あの時、そんなことを意識したわけではない。
「歎異鈔」を読み返して、初めてこんな風に解釈できなくもないかと思ったまでである。逆にいえば、自分の愚かさを思い知ったことによって、今まで「歎異鈔」に抵抗を感じさせていたものが、無力化したことは確かである。
五月、とく子の腹部は着物の上からも既にそれと判る。これ以上、カッフエに勤めさせておくわけには行かない。と言って、そんな腹をして、とく子の郷里へ帰せる義理のものではない。とく子は養女である。が、とく子は養家を嫌い、家出同様にして、東京へ出て来たのであるからである。
しかしとく子は郷里へ帰るという。それより他に方法がないからである。私は自分をいかにも卑怯だと思う。しかしやはり同意するより他はなかった。
五月の、風の強い日、とく子は帰郷することになった。