Japanische Klassiker mit Furigana
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みおつくし
澪標・落日の光景
外村 繁
Lesen Sie 澪標・落日の光景 (みおつくし) von 外村 繁 (とのむらしげる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.889 Zeichen · 268 Bildschirme
私は途中まで送って行く。遠足に行く小学生のように、かなり愉しい。全くよい気なものである。
二子玉川で電車を降り、多摩川の長いコンクリートの橋を渡る。数年前までは舟で渡った、ととく子がいう。風が強いので、とく子は度度背を向けて、着物の乱れを直さねばならない。その度に、私の好色的な視線は、そんなとく子の姿を捉えることを忘れない。
多摩川の橋を渡ると、神奈川県の溝ノ口である。急に鄙びた風景が展けている。堤を下りると、一軒の茶店があり、その前の桑畑の横に、一台の馬車が轅を下して置いてある。とく子は一人で茶店の中へ入って行く。
「馬車は何時に出るの」
帰って来たとく子に、そう言った。とく子は微笑を浮かべて言う。
「それが、時間表もありませんのよ。田舎の人って暢気ですから、そんなもの、要らないのかも知れませんわ」
「すると、馬車はいつ出るか判らないんだね。呆れたね」
「まあ、そういうことになりますが、あそこで待っている人も、『そのうちに出るべ』って、平気なものですわ」
そう言えば、とく子も何を急ぐ身でもない。私はいかにも穏かな人の心に接したようで、私の心も自ら安らいで行く。