Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼくとうきだん
濹東綺譚
永井 荷風
Lesen Sie 濹東綺譚 (ぼくとうきだん) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 57.666 Zeichen · 114 Bildschirme
雷門からはまた円タクを走らせ、やがていつもの路地口。いつもの伏見稲荷。ふと見れば汚れきった奉納の幟が四五本とも皆新しくなって、赤いのはなくなり、白いものばかりになっていた。いつもの溝際に、いつもの無花果と、いつもの葡萄、然しその葉の茂りはすこし薄くなって、いくら暑くとも、いくら世間から見捨てられた此路地にも、秋は知らず知らず夜毎に深くなって行く事を知らせていた。
いつもの窓に見えるお雪の顔も、今夜はいつもの潰島田ではなく、銀杏返しに手柄をかけたような、牡丹とかよぶ髷に変っていたので、わたくしは此方から眺めて顔ちがいのしたのを怪しみながら歩み寄ると、お雪はいかにもじれったそうに扉をあけながら、「あなた。」と一言強く呼んだ後、急に調子を低くして、「心配したのよ。それでも、まア、よかったねえ。」
わたくしは初め其意を解しかねて、下駄もぬがず上口へ腰をかけた。
「新聞に出ていたよ。少し違うようだから、そうじゃあるまいと思ったんだけれど、随分心配したわ。」
「そうか。」やっと当がついたので、わたくしも俄に声をひそめ、「おれはそんなドジなまねはしない。始終気をつけているもの。