Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
Lesen Sie 犀星王朝小品集 (おぎふくうた) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.794 Zeichen · 211 Bildschirme
もひそかに母からわたされていることを知っている経之は、はぎ野の身体にすら信仰をもっていたのだ、だが、もはや彼の眼に宵のほどに逢ったはぎ野の言葉すら、それがまことの言葉であるとは思えなかった。
経之は先まわりして庭に下りると、池のうしろに身をかがませた。定明のもとに通う時は池の裏側を通らなければならないし、勢い経之のかがんだあたりに姿をあらわすことになるのだ、経之はへいぜい気のつかない庭の風物が、この瞬間に一変してくることを感じた。見なれている幽谷のしらべをつくる松柏の類は、少しも経之に常日頃のしたしい風景にならずに、どこか、素っ気ない他処の庭を見るようなはなれた気持であった。こんな冷たいよそよそしい風物を眺めることは初めてであった。経之はいやな沈んだ気分から、そっと呼んで見た。此処は一たい何処なのだ、何をしに自分がこういうところに跼まねばならないのだ。
風はなかった。それだけに酷い冬の名残りがきびしく、凍みを耳や足もとに、つたえて来た。やっと庭に出たはぎ野は、庭に下り立ったと見ると同時に、非常に素早い足どりで萩の枯れ叢、松の木の間、冬も緑をもつ低い木々のあいだを縫うて、殆ど走るがように急ぎ足で行った。