Japanische Klassiker mit Furigana
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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
Lesen Sie 犀星王朝小品集 (おぎふくうた) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.794 Zeichen · 211 Bildschirme
見かけた人もありそうに聞いていましたが。」
生絹は以前眺めた田や畠の景色にも、変った身にそわぬものを感じた。しかも、新しい一棟の庭の樹々は一位も松の木も、みな昔のままだった。
生絹は思い出して南の方の田の百姓家をおとずれた。そこは前によく野の菜の物を購った、かくれた一軒家であったから網代車の簾かき上げて、百姓の女に行き会った。
「生絹さま、お立派になられました。」
「薄男はどうしていられるか教えてくだされぬか。」
「薄男さまは永い間釣をしてその魚を商うていられましたが、一年余り前から絶えてお姿を見かけたことがございません。」
此処でもその行方は知ってはいなかった。
「ゆっくりと町の通りを行くように、通りが、曲ればそのまま曲って行きや。」生絹は下ノ者にそういいつけ、簾の間から町々を眺め、南から東に出て北の浦べに出たときには日はもうくれかかっていた。けれども、生絹は町から町へ網代車を遣って、停めることがなかった。「日もくれかかりますゆえお宿とらねばなりませぬ。」と何度もいう下ノ者に、いま暫し、いま暫しといい、生絹は昔懐かしい町々を簾のあいから眺めた。衣を商う家、革をひさぐ家、魚をならべる店、わけて薄男がよく訪れた香さばく家、それらの店にすわる男らの顔にみな見覚えがあった。