Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おぎふくうた

犀星王朝小品集

室生 犀星

Lesen Sie 犀星王朝小品集 (おぎふくうた) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.794 Zeichen · 211 Bildschirme

Aozora Bunko

生絹もその時不幸な一瞥を合わせたのであった。だが右馬の頭は物もいわずに恥ずかしさのためか、蘆の荷をとり乱したまま馳り出した。生絹はもうちょっとのことで車から出てあとを趁うところであった。

「お懐かしゅうございます右馬の頭さま、どのようにお逢いしたく永い間思いわずろうていたことでしょう。」

生絹は逃げかくれて馳るうしろ姿を見つめた。その心はどこかに冷たさのある、しかも人と人の苦しみのうえに乗っているような気持だった。逃げかくれる気持も分るが、それをいま一度趁うようになるのも拒けられぬ女の心だった。

「蘆売る人をさがせよ。かならず捜し出して下され。」

生絹の声は殆ど祷るように震えをおび、静かにしていられぬふうに車から降り立った。砂白く暮色は濃い藍をかさねた往来のうえに、いまは生絹みずからの顔すら町の人に見分けられぬふうであった。生絹は一本の蘆を手にとりそれのまっすぐに伸びた美しさに見とれながらふたたび右馬の頭さま、わたくしたちはなんという不幸な時ばかりを選んで、そういう日にばかり逢わねばならぬのでしょうと囁くようにいった。わたくしたちは逢えば逢うで悲しく、逢わざれば逢わざるが故に悲しいとしたらわたくしたちは一体どういう方向にむいて生きてゆくことになるのでしょう。