Japanische Klassiker mit Furigana
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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
Lesen Sie 犀星王朝小品集 (おぎふくうた) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.794 Zeichen · 211 Bildschirme
四人は土手の上に坐っていた。はしばみの高い頂の枝にもはや田の上に下りて来ぬ春の鶫が枝がくれに、幾声も高く油囀りの最中であった。あぶらの乗った春の黒鶫は枝々のあいだに翼の光を日の中にちらつかせ、田の畔も、川の面にも、濛々たる春色が立ちこめていて、二人の若者はうす睡たいような気持で美しい橘の姿を見入った。二人はもう八十日も橘の館に通うていること、そしてきょうのように悠々と野に遊ぶことは予期しない招きであった。
橘は用意の酒と肴とを女房たちにはこばせ、まだ萌えたばかりの草の上にひろげた。二人の若者ははじめて橘がものを食べるのを見たのである。それは物を食べるということが女の美しさが倍に見え、唇のうごきや頬のうごきの微かさにも、いい知れぬ親しさがあった。このようにしてこの女と朝夕に食べることを一緒にしたら、どれほど愉しかろうと若者らは同時におなじ考えにふけっていた。
「我ら、野の美しさを永い間忘れてい申した。」
都に住む怱忙の若者らは、いまさらに野の清い広さにしみ入って眺めた。津の人は和泉の人の誰にいうとも分らないこの言葉にも、一応なにか答えぬわけには行かなかった。