Japanische Klassiker mit Furigana
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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
Lesen Sie 犀星王朝小品集 (おぎふくうた) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.794 Zeichen · 211 Bildschirme
たんに耳ばかりではございません、わたくしの五体があそこではそれぞれの記憶のなかに、手は手、胸は胸、脇の下までが別々の感じをもとめ、そして別々の思いに耽ってゆくのでございます。ことさらに胸にのこった紀介様のおからだの重みも御身様の前で申し上げるのも何となく気が負けるような気になりますけれど、人の美しいちからはどのようにしても、滅びきらないものに思われます。かつて紀介様はいつか何かのまぎれに、ふいにお仰せになったことがございました。人の思いは何百年とか何千年とかいう永い歳月をもただ、一呼吸に次の時代の人に移ってあらわれることがあるものだ、まるできのう考えたような新しい思いをそのままに移しかえてくるから妙だ、人間の考えたものの前では、永い歳月などというものは有りえない、よい人間の考えたことは全く今すぐに思いついたことと同じ程度に新しいのだ、と、こういうふうに仰有ったことがありました。実際人間は亡くなっても、それを考えるときはすぐきのうお亡くなりになったとしか思われないくらい近い日を考えるようになるものでございます。
こういう毎夜のわたくしの歩みはいつも、松並木のなかばまで参りました時に、きっと一応立ち停まって見るのがつねでございました。