Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おぎふくうた

犀星王朝小品集

室生 犀星

Lesen Sie 犀星王朝小品集 (おぎふくうた) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.794 Zeichen · 211 Bildschirme

Aozora Bunko

「誰方様。」

筒井は小さい肩をすぼめ、身をまもろうとすると、狩衣を着た青年が立っていて、隠れもせずにいった。

「よい月夜になり申した。」

「はい、思いがけないよい月にございます。」

青年の顔は真白だった。筒井はこういう月をあびた男の顔を見たことが初めてで、驚いて見直したほどであった。

「明日はみ社に詣ろう、御身も見えられるように。」

「はい、お供させていただきます。」

筒井はふと思いいでて、ほかに物の言いようもなく、

「御襲いただきお礼もまだ申し上げないでおります。」

彼女は襲に手をさわり腰をかがめた。春の野の萌黄色の襲は月の下では、ひと際、柔らかい触りを見せていた。

「お似合いでよかった。袿もそのうち吩咐けます。」

「わたくしごときものに御心労おそれ入ります。」

「妹ともよく似合のものをお捜しあれ。今宵のお身はまことに美しかった。」

「そのようなこと仰せられては、ゆめなりませぬ。」

筒井はなんとなく硬い顔付になった。心に恐ろしい脅えがあった。その脅えははなはだ道徳的なものだった。

「そなたが来てくれてから父上も大変元気になられたし、我らも息を吹き返した思いを致しいる。