Japanische Klassiker mit Furigana
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ねこまち
猫町 他十七篇
萩原 朔太郎
Lesen Sie 猫町 他十七篇 (ねこまち) von 萩原 朔太郎 (はぎわらさくたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.483 Zeichen · 58 Bildschirme
何よりも苦しいことは、性慾ばかりが旺盛になって、明けても暮れても、セクスの観念以外に何物も考えられないほど、烈しい情火に反転悶々することだった。しかもそうした青年時代の情慾は、どこにもはけ口を見出すことができなかった。遊女や売春婦等のいる所へは、絶対に行くことを禁じられていたし、第一親がかりの身では、そんな遊興費の銭を持つことができなかった。その上僕の時代の学生や若者は、擬似恋愛をするような女友達もなく、良家の娘と口を利くようなチャンスは殆んどなかった。そんなはけ口のない情慾を紛らすために、僕らは牛肉屋へ行って酒をあおり、肉を手掴みにして壁に投げつけたり、デタラメの詩吟を唄って、往来を大声で怒鳴り歩いたりした。しかもその頭脳の中には、詰めきれないほど残ってる試験の課題が、無制限の勉強を強いているのである。そうした青年時代の生活は実にただ「陰惨」という一語によって尽される。「青春の歓楽」などということは、僕らはただ文字上の成句として、一種のイメージとしてしか知らなかった。
初めて僕が、多少人生というものの楽しさを知ったのは、中年期の四十歳になった頃からであった。