Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ばんちょうさらやしき

番町皿屋敷

岡本 綺堂

Lesen Sie 番町皿屋敷 (ばんちょうさらやしき) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.494 Zeichen · 67 Bildschirme

Aozora Bunko

仔細らしく打傾けた母のひたいに太い皺の織り込まれたのを、お菊は少し嘲るようにほほえみながら眺めた。

「何の、お前が取越し苦労。殿様は白柄組の中でも指折りの剣術の名人、宝蔵院流の槍も能く使わるると、お頭の水野様も日頃から褒めていられます。ほほ、なみなみの者を五人十人相手になされたとて、何のあやまちがござりましょうぞ。喧嘩といえば穏かならぬようにも聞えまするが、それも太平の世に武を磨く一つの方便、斬取り強盗とは筋合が違うて、お上でもむずかしゅういわるる筈がござりませぬ」

家風がおのずと染みたのか、但しは主人の口真似か、お菊は淀みもなしにすらすらといい開いて、母の惑いを解こうとした。こちらが思うほどでもなく、娘は案外に平気でいるので、母も押返して何ともいい様がなかった。彼女が今日たずねて来たのは、娘の顔を見たさが専一ではあったが、娘の口振りに因っては、この不安心な屋敷から暇を貰おうという相談を持出そうかと内々考えていないでもなかった。しかも娘は平気でいる、むしろ喧嘩好きの主人を褒めている。それが安心でもあり不安心でもあるので、母もしばらく黙っていると、お菊は又いった。