Japanische Klassiker mit Furigana
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ばんちょうさらやしき
番町皿屋敷
岡本 綺堂
Lesen Sie 番町皿屋敷 (ばんちょうさらやしき) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.494 Zeichen · 67 Bildschirme
ありがたく頂戴しろ」
小判二枚、この時代には大金である。迂闊に受取って善いか悪いか。母は手を出しかねてためらっていると、十太夫はその金包みを彼女の膝の前に突き付けた。
「よいか。お菊もよく見て置いて、後刻、殿様にお礼をいえ」
「ありがとうござります」
母と娘とは同時に礼をいった。それを聞いて十太夫は起った。
「まあ、ゆるゆると話して行け」
彼は無雑作に奥へ行ってしまった。お仙は襷をかけて裏手の井戸へ水を汲みに出ると、春のゆう日は長い井戸綱を照して、釣瓶からは玉のような水がこぼれ出した。
「ほう、良い水……」と、お菊の母は帰り際に井戸側へ寄った。
「深いので困ります」と、お仙はいった。
「山の手の井戸の深いは名物でござります」と、母は井戸の底を覗いた。「ほんに深いこと、これでは朝夕がなかなか御難儀でござりましょう」
困るとはいうものの、御用のない時には奴達が手伝って汲んでくれるから、さのみ難儀でもないとお仙は話した。御座敷の庭先にももうひとつの井筒があって、それはここよりも浅く、水も更に清いのであるが、一々にお庭先までは廻って行かれないので、深いのを我慢してこの井戸を汲んでいると彼女はいった。