Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
が、直義は首をふった。
「いえ母上、この御飛脚です。――都におわす六波羅の伯父上(上杉憲房)から、この直義へ、いつになく、細々と」
母はやや失望したらしいのに、直義の方はひとりで弾んでいた。手の書状を、くりひろげて見せながら。
「ごらんなされませ。六波羅の任を解かれて、近く御帰国と見えましょうが。……なお、その上にも、鎌倉表に下着のせつは、ただちに執権どのにお目にかかり、憲房が身に代えても、きっと、甥(高氏)の蒙れる御不審に答えて、蟄居の科を解かんと、さも御確信ありげに、したためてござりまする」
「そうか。そりゃ、あの御方のこと。お力にはなろうがの?」
直義が単純によろこぶようには、彼女にはまだ俄にもよろこべなかった。
これまでとて、幕府への詫びや釈明には、八方、策を尽して来たのはいうまでもない。だが、ふしぎなのは、この二年余、問注所から高氏への喚問すら一度も行われていないのだった。
「母上、母上。もうそんな身も世もなげなご心配はなされますな。……あの思慮ふかい伯父上が、かならずと、こう書いておられる以上、よほどなお見通しがなくては能わぬこと。ああ、兄者人もさぞ悶々としているだろうに、何とかこの吉報を、知らせる手だてはないものかなあ」