Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
「――しまった」と、地に匍ッて、一度、息をころしてみたものの、もう、まにあわない。
彼方の警固小屋の辺で、
「だれだッ」
と、とがめた声が、胆にこたえた。たちまち、曲者曲者と、松明のヒラめきまでがすぐ見えて来た。
「ち。ざんねんな」
直義は、あきらめた。
ぜひなく、そこの切岸をすべり降りた。そして下の流れを、ザ、ザ、ザと脛で切って渡り、向うの河原地へ、跳び上がった。
夕方、小舟を隠しておいた芦のしげみまで、鵜の飛ぶような低さで走った。けれど芦荻は深く、その蕭々は何処もかしこも同じに見えて、小舟は、なかなか見つからない。
「まずいが」
とは、思慮されたが、ゆとりはない。彼は陸へ逃げ上がった。
すでに、見つけたらしい新田方の番武者どもは、執拗に、彼の姿を眼の線から放さなかった。また一方の直義は、わざと岩井村の東を迂廻して、町屋へまぎれ入ろうとしたが、しかし曲輪口には、城戸があった。
直義とは、気がつくはずもなく、足利家の夜詰の士は、
「待てっ」
と、大喝をくらわせ、
「何者か」
とばかり、あやうく長柄のみねで、宙を飛んできた彼の足もとを払うところだった。
「わしだ。