Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
悪酒を仰飲ッた一気の酔いに淋漓たる鬼のように、こういったのは無思慮な血気や、軽輩にすぎなかった。――当然、このあとのものが来る。そのたたりはどんな形であらわれるかと、屋形の奥の、さらに奥なる北ノ丸の方を、暗然と見ていた家臣も少なくはない。
――そこの北ノ丸へは、騒ぎがしずまるやいな、すぐ直義が呼ばれていた。
彼は、母の姿がいつになく恐いものに見えて、遠くにペタとひれ伏したままだった。
当主貞氏がいない屋形は、彼女が当然な留守の重荷を負っている。――兄高氏とちがって、弟は、年に似げない分別者、賢い性、と見ていたのは、女親の甘さだったのか。……じっと見すえる眼はさすが口惜しそうなものをキラとこぼしかけていた。
「……何をお言やる。あなたが腹を切ッたからとて、それで、すむほどなことと思うているのですか。おろかしい血迷い言を。――もう嬰児でもおわすまいに」
「……でも、母上」
直義は泣きじゃくッた。
嬰児でもあるまいに、といわれると、逆に彼は、自分が嬰児みたいに思われ出した。
「――腹を切る、それしか、直義にはお詫びのしかたも見つかりませぬ。死にたい、死なせてください」