Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
さらには、新田足利領の国もとでは、すでに合戦が起っているとか、いやもう、異な風聞が鎌倉じゅうにわき立って、われらまでも、ただではすまじと、その夜は、鏃を磨いていたことでござりました」
「では、新田殿の上訴が、そのように大きく聞えて、あらぬ噂までを、鎌倉の上下につたえていたのですか」
「当夜も、おあるじ上杉殿には、鎌倉政所につめ切って、評定衆の座でお激論もありしとか。また、内管領長崎殿や執権の君へも、直々のお訴えを披瀝して、夜半もすぎる頃、扇ヶ谷のおやしきに引きとられるや、ただちに行けと、われらに、この飛脚をお命じあったものにござりまする」
「…………」
勿体なやと、清子は聞くうちにも、兄の窶れを瞼にうかべた。
みだれた幕政と権力の百鬼を相手に、いかに兄憲房が、孤軍奮闘したことかと、その惨心が察しられる。
使いの武士は、書状をささげて。
「では、途上なれど、紛うなきおん方様、これにてお手渡し申しあげまする」
「おお大儀であったの」
輿の内で、すぐ披く。
いや、その見馴れた兄の薄墨の筆ぐせを眼にたどるまでは、拝むような心地と、さてはまた、凶か吉かと、痛いほど胸はときめいた。