Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
なあ直義、おれが一見しておけば、おぬしも見たのと同じじゃないか」
「は」
「しかし、それは同じでないというならば、尾いて来い。その代りそれは二人は他人だということになるぞ」
「……兄者人。……行ってらっしゃい。直義は参りますまい」
「そうか。よくききわけた。まだ夜明けにはだいぶまがある。家来どもが眼ざめるとまたうるさい。戻って、寝ておれ、寝ておれ」
鑁阿寺、大日堂のゆかは、漆のような闇だった。
太柱も、高い天井も、墨一色のしじまである。ただそのまんなか辺に、ぽつねん孤坐していた高氏の影だけが、微かに白い。
「……まだか」
今暁。御霊屋のおくを開いて“置文”を取出している母の、ゆるしの合図を、ここに控えて、さっきから、待ちすましている高氏だった。
母の清子は、自分より先に、北ノ丸を出ていたらしい。
母はゆうべ言った――
「わらわが、置文を取出したら、やがて御霊屋の鈴縄を引きましょう。それを聞いたら、あなたも、廊の橋を渡ってよい。そのとき、母はおらぬが、篤と、腹をすえて御披見なされよ」と。
ここは足利家の氏寺、母の清子は、わが居間みたいに、隅々の勝手まで知りぬいている。