Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
「若殿。いよいよお執事(長官)の問注は、明日でございますな」
介添えの中に、右馬介もわれから望んで、来ていた。
「どうだ、あぶない川を越えなくても、召の御期日には、充分、まにあったであろうが」
「が、明巳ノ刻(午前十時)の御出頭では、お休みのまも、お心がまえの暇もいかがかと」
高氏は、顔の薄らあばたを、みな笑クボにしてみせた。
「眠るだけでたくさんだ。わしを訪ねてくる客もあるまい。久しぶり海の香にひたって、まずは深々と眠るまでよ」
問注所の朝は、森閑として、小鳥のさえずりの中だった。――庁内の法廷ともいえる拭き磨いたような板じきの広間にも、まだ何人も見えていない。“審問ノ間”“対決ノ廂”などとここをいっている。
床には、召の者の円座だけがおいてあった。西の側に一つ、東側に二つ。そして一だん高い正面に、問注所衆の座席やら書記机などが見える。
また、その横に“御簾ノ廂”とよぶ小部屋があった。時により重大な裁判には、執権代とか、将軍の連署などが、陪審に臨むことがある。簾の内でこの場のもようを詳細に見聞きし、立帰って後、上聞に達するのである。
――ぴらっと、床に鳥影がひらめいた。